2 二人の若いウィザードを帰らせた後、部屋では、ちょっとした喧騒になっていた。 「ミサキかぁ、かわいらしい娘だったねぇ」 「何を浮かれてるんだい、ソーマ? あたいはもっと、頼りがいのある凄腕のウィザードを期待してたんだけどねえ」 「いいじゃないですか、おかしら。常日頃俺は思ってたんですよ、このギルドには『華』が足りないってね、フィンちゃんだって居心地が悪かったでしょうに」 「まったく、これだから男どもときたら……それよりムート、急に『保留にしろ』なんてサインを出したりして、どういったわけなんだい?」 「な、なんだって! 急に試験だなんておかしいと思ったら、ムートのダンナだったのかよ」 びっくりした風なソーマにアガタは再び、 「そうだよ、ウチも大所帯になってきたけど、フィンが入ってくるまではみんな血の気の多い特攻野郎ばかりだったからねぇ。これじゃ命がいくつあっても足りやしないってんで、後衛職を中心にしたフォーメーションのためにフィンの他にも使えるウィザードが欲しいって言ったのはムートじゃないか」 「ふむ……、少し気になることがあってな」 「まぁ、あんたがそう言うのなら構わないけどさあ、いずれにせよ明日の任務次第だね」 言葉少なに、あまり詳細を語ろうとはしない老騎士ではあったが、マスターであるアガタをはじめ、ギルドのメンバー全員が彼の言葉には最大限の配慮を置くというのが暗黙の了解となっていた。 翌日、時間よりもやや早く、ミサキは指定された場所に向かっていた。 「頑張らないと……」 リオンによる口ぞえがあったと聞いてしまっては、その期待に応えないわけにはいかなかった。また、フィンのあの嬉しそうな様子を目の当たりにすると、残念がらせるのは忍びない。 本当は、これまで可能な限り一人で狩りをしてきた。他者とパーティを組んで魔物と闘った経験は皆無といってよかった。自信はまるでないのだ。 気負いは確かにある。しかし、そんな自分を諌めつつ、ミサキは昨日初めて叩いたドアをノックした。あの時と違って今度はフィンは同行していない。心細くないといえば嘘になる。 「失礼します」 「やぁ! 待ってたよ、ミサキ」 そんなミサキを待ち受けていたのは、昨日彼女を迎え入れたギルドメンバーの中でも、たしかソーマとかいう名前のプリーストただ一人だった。 「あの……他の方は?」 ちょっとした不安を覚えておろおろするミサキに、ソーマはとんでもない、といった様子で説明した。 「あ、あぁ大丈夫だいじょうぶ。ちょっと急な要請で、みんな予定より早く現地に向かったのさ。俺は君と一緒に後から追いかけるために残ったんだけどね」 「そうだったんですか。あたしのために、申し訳ありません」 「気にしない気にしない。今日はぜひ頑張ってもらいたいからね、俺はプリーストのソーマってんだ。よろしく」 「はい、よろしくお願いします。ソーマさん」 「『ソーマ』でいいよ。じゃ、さっそく追いかけますか。少々道は険しいけど、大丈夫。俺にまかせてくれ」 「はい」 |